いよいよ算定基礎届の手続きの時期が近づいてまいりました。
算定基礎届について初めて手続きされる方など、よく分からないなと思われる方に
簡単にご説明させて頂きます。
・・・まずはじめに・・・
1.定時決定とは何ですか?
健康保険および厚生年金保険の被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じな
いように、7月1日現在で使用しているすべての被保険者に4~6月に支払った賃金を、事業主
の方から「算定基礎届」によって届出いただき、厚生労働大臣は、この届出内容に基づき、毎年
1回標準報酬月額を決定します。
これを「定時決定」といいます。
「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)の各月
に適用され、納めていただく保険料の計算や将来受け取る年金額等の計算の基礎となります。
2.ケースごとの標準報酬月額の算出方法
ケース① 一般的な例
●支払基礎日数が3カ月とも17日以上の場合 ⇒ 3カ月が対象となります。
給与規定
月給制・毎月20日締、当月25日支払
4月、5月、6月に支払われた給与の合計額を、その月数「3」で割った額が報酬月額になります。
ケース② 支払基礎日数に17日未満の月があるとき
●支払基礎日数に17日未満の月がある場合は ⇒ 支払基礎日数が17日以上の月を対象とします。
○給与規定
月給制・毎月20日締、当月25日支払
17日未満の月を除いた4月・6月の報酬の合計をその月数「2」で割って報酬月額を算出します。
ケース③ 短時間労働者は「支払基礎日数を11日」でみます
◎短時間労働者とは
1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方の場合で、次の要件をすべて満たす方が該当となります。
①週の所定労働時間が20時間以上あること
②雇用期間が継続して2カ月を超えて見込まれること
③賃金の月額が88,000円以上であること
④学生でないこと
⑤特定適用事業所または国・地方公共団体に属する事業所に勤めていること
※制度改正により、令和4年10月からは通常の労働者と区分なく
「雇用期間が2カ月を超えて見込まれること」が要件となりました。
●支払基礎日数が3カ月とも11日以上の場合⇒3カ月が対象となります
●支払基礎日数に11日未満の月がある場合⇒支払基礎日数が11日以上の月を対象とします。
●短時間労働者である月と短時間労働者でない月が混在している場合
⇒各月の被保険者区分(短時間労働者であるかないか)に応じた支払基礎日数により算定対象月を判断します。
●算定対象となる期間の月の途中に、被保険者区分(短時間労働者であるかないか)の変更があった場合
⇒報酬の給与計算期間の末日における被保険者区分に応じた支払基礎日数により算定対象月を判断します。
ケース④ 給与の支払対象となる期間の途中から入社したとき
●給与の支払対象となる期間の途中から資格取得したことにより1カ月分の給与が支給されない場合
⇒1カ月分の給与が支給されない月(途中入社月)を除いた月を対象とします。
ケース⑤ 賞与などが年4回以上支給されたとき
●前年の7月からその年の6月までに4回以上の賞与が支払われた場合
⇒支払われた賞与の合計額を12カ月で割った額を各月の報酬に加え、報酬月額を算出します。
ケース⑥ 一時帰休による休業手当が支給されているとき
●7月1日時点で一時帰休の状況が解消していない場合
⇒一時帰休による休業手当等が支払われた月のみで算定するのではなく、通常の給与を受けた月もあわせて、
報酬月額を算出します。
●7月1日時点で一時帰休の状況が解消している場合
⇒4、5、6月のうち、休業手当を含まない月を対象とします。
なお、4、5、6月いずれにも休業手当が支払われている場合は、一時帰休により低額な休業手当等に基づいて決定または改定される前の標準報酬月額で決定します。
ケース⑦ 一般的な方法では算定できないとき
●4、5、6月のいずれも支払基礎日数が17日未満(短時間就労者については15日未満、短時間労働者については11日未満)の場合、または病気等による欠勤、育児休業や介護休業等により4、5、6月のいずれも報酬をまったく受けない場合⇒従前の標準報酬月額で決定します。
ケース⑧ 一般的な方法で算定すると著しく不当になるとき
(1)3月以前にさかのぼった昇給の差額分または3月以前の給与を4、5、6月のいずれかの月に受けた場合
⇒3月以前の昇給差額分(または遅配分)を除いた報酬月額の総計から報酬月額を算出します。
(2)4、5、6月のいずれかの月の給与が7月以降に支払われる場合
⇒7月以降に支払われる月以外の月を対象月とします。
(3)低額の休職給を受けた場合(病気等による休職の場合)
⇒休職給を受けた月以外の月を対象月とします。
●賃金カットを受けた場合(ストライキ等の場合)
⇒賃金カットを受けた月以外の月を対象月とします。
(4)「4、5、6月の給与の平均額から算出した標準報酬月額」と「前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から
算出した標準報酬月額」に2等級以上の差が生じ、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合
⇒ 前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から算出した標準報酬月額で決定することができます。
※申し立てる場合は、「事業主の申立書」と「被保険者の同意」の提出が必要です。
3.随時改定と月額変更届
毎年 1 回の定時決定により決定された標準報酬月額は、原則その年の 9 月から翌年の 8 月まで 1 年間
適用されますが、この間に昇給や降給などにより報酬に大幅な変動があったときは、実態とかけ離れた
状態にならないよう次回の定時決定を待たずに標準報酬月額を見直します。これを「随時改定」といい、
「月額変更届」を提出していただくことになります。
改定された標準報酬月額は、再び随時改定がない限り、6 月以前に改定された場合は当年の 8 月まで、
7 月以降に改定された場合は翌年の 8 月までの各月に適用されます。
(1)月額変更が必要なとき
「月額変更届」による随時改定は、次の 3 つの条件をすべて満たしたときに行います。
➀昇給や降給などで固定的賃金に変動がありましたか?
②変動月以降引き続く3カ月とも支払基礎日数が17日以上ですか?
③変動月から3カ月間の報酬の平均額と現在の標準報酬月額に2等級以上の差がありますか?
➀②③をすべて満たしたときに行います。
(※) 随時改定に該当すれば、固定的賃金が変動し、その報酬を支払った月から数えて 4 カ月目に新た
な標準報酬月額が適用されます。
(※) 特定適用事業所における「短時間労働者」の場合は支払基礎日数 11 日以上で読み替えてください。
(2)固定的賃金の変動とは
☆固定的賃金とは?
支給額・支給率が決まっているもの
基本給(月給、週給、日給)、家族手当、通勤
手当、住宅手当、役付手当、勤務地手当 等
変動があった場合とは?
・昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
・給与体系の変更(日給から月給への変更等)
・日給や時間給の基礎単価(日当・単価)の変更
・請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
・住宅手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更
こちらは固定的賃金ではありません。(非固定的賃金といいます)
残業手当、能率手当、日直手当、休日勤務手当、精勤手当 等
➡非固定的賃金の変動のみでは随時改定は行いません!
(3)随時改定の対象とならない場合
①固定的賃金は上がったが、残業手当等の非固定的賃金が減ったため、変動後の引き続いた 3 カ月分
の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より下がり、2 等級以上の差が生じた場合
②固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増えたため、変動後の引き続いた 3 カ月分の報酬の平均額
による標準報酬月額が従前より上がり、2 等級以上の差が生じた場合
(まとめ)
いかがでしたでしょうか。ずいぶんと複雑ですね。
厚労省から動画で手続きの説明を見ることが出来ます。よろしければご参照下さい。
算定基礎届事務説明【動画】・ガイドブック(令和5年度)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/santeisetsumei.html
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/santei.guide.book.pdf
現在、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で週20時間以上働く短時間労働者
は、厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象となっています。
この短時間労働者の加入要件が更に拡大され、令和6年10月から厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。
算定基礎届、月額変更届の手続きはますます複雑化しますね。
何かお困りのことがありましたら、ご相談も承っております。
ありがとうございました。